糖尿病の予防には、血糖値のコントロールが大きな鍵となります。
血糖値が高いと糖尿病を発症する
血糖値は、血液中に含まれる糖分(ブドウ糖)の値を表わす数値です。血糖値が高い状態が続くと「糖尿病」を発症し、血液中のブドウ糖によって毛細血管に障害が起こります。これにより、身体のさまざまな部位に深刻な病気を発症します。
とくに、排泄障害の起こる「糖尿病腎症」、目に障害が起こる「糖尿病網膜症」、手足に痺れや痛みが起こる「糖尿病神経障害」は、糖尿病の三大合併症と呼ばれています。これらの合併症は、腎不全による死亡、失明、手足の切断といった重篤な症状に進む恐れがあります。
また、糖尿病の影響は毛細血管だけでなく、動脈にも起こります(動脈硬化)。心筋梗塞や脳梗塞といった動脈硬化が原因となる病気にも、糖尿病は関係しています。
食生活を見直して血糖値を下げる
血糖値が高くなる理由はいくつかあります。ひとつは、習慣的な糖分の摂り過ぎです。高血糖を避けるためには、「食生活を見直す」ことが必須になります。
まず気をつけたいのが、暴飲暴食を避けること。ゆっくりとよく噛んで食べることです。これらは、血糖値の急激な上昇を抑えてくれます。
そして、お米やパン、麺類といった炭水化物の摂取には、量と摂取方法に血糖値の変化を穏やかにするコツがあります。
摂取量の目安としては、ご自身が一日に必要なカロリー(およそ2000kcal)の約60%を炭水化物から摂るとされています。
食後の血糖値の急激な変化を抑えるためには、野菜や海藻類を先に食べ、その後にお米やパン、麺類を食べるようにすると良いようです。
簡単にできることなので、こちらも実践してみましょう。
血糖値と内臓脂肪の関係―インスリン
血糖値コントロールのもうひとつは、「運動を習慣にする」ことにあります。血糖値を一定に保つために、膵臓ではインスリンというホルモンが作られます。このインスリンの量や働きに問題があると血糖値は高い状態になります。
インスリンに悪影響を与えるのが、臓器のまわりにつく脂肪(内臓脂肪)です。内臓脂肪は、TNF-αという物質を分泌し、インスリンの働きを阻害することが知られています。
そして、インスリンの働きが悪くなると、膵臓はそれを補うために、さらに多くのインスリンを分泌するようになります。しかし、こうしたことが続くとやがて膵臓は疲弊し、インスリンを十分に分泌できなくなります。
すると、インスリンの働きはさらに悪くなります。こうして負のスパイラルが起こり、高血糖の状態が続きます。
内臓脂肪を減らすには食生活の見直しとともに、運動習慣を身につけることが大切になります。
とはいえ、急に激しい運動をする必要はありません。食後に散歩をするといった、軽い運動から始めましょう。
インスリン療法が必要になることも
空腹時の血糖値が100mg/dl以上、または食後2時間後の血糖値が140mg/dl以上だと、糖尿病予備軍となります。健康診断結果票などで、ご自身の血糖値を確認しましょう。当てはまる方は血糖値を下げるために、食生活の見直しと運動を習慣にして内臓脂肪を減らすようにしてください。
空腹時の血糖値が126mg/dl以上、または食後2時間後の血糖値が200mg/dl以上に2回以上当てはまる場合は、糖尿病と診断されます。
糖尿病になると、医学的な見地に基づく食事制限や運動療法が必要になります。
さらに、インスリンの量の不足や働きの低下を改善するために、インスリン療法が検討されます。インスリン療法では飲み薬もありますが、それでも血糖値のコントロールが不十分な場合は、入院しての治療や自己注射によるインスリンの補充が必要となります。