熱中症をゼロに

熱中症のメカニズムを知ることは、予防や応急処置を行なうときに助けとなります。
発汗機能が働かず、体温が急激にあがる――ここがポイントになります。



発汗機能の低下が熱中症を招く

 熱中症になる大きな理由に、「発汗機能の低下」があげられます。
 気温や室温が非常に高い環境下で発汗機能が低下すると、体温を正常に保つことができなくなります。
 その結果、身体にこもった熱によって脳や内臓に支障が起こり、重症化すると死に至ることもあります。

【ポイント】汗をしっかりかけないと熱中症のリスクが高まる。



水分が足りない・汗が蒸発しない

 発汗機能が正常に働かなくなる原因のひとつは、身体の水不足です。
 汗の99%は水分でできています。身体が脱水状態になると汗をかくことができなくなります。
 ただ、発汗しただけでは体温が下がるというわけではありません。
 汗が肌の表面から蒸発することが必要で、このときに身体の熱を奪っていきます。
 このため湿度が高く汗が蒸発しない状況では、発汗は正しく機能していない恐れがあります。
 ほかに発汗機能に影響を及ぼすのは、加齢です。
 高齢になると汗をかきにくくなります。65歳以上の方の熱中症リスクが高いのは、このためです。
 また、基礎疾患のある場合や体調不良のときも発汗機能に影響します。

【ポイント】身体の脱水・高温多湿の環境・加齢・基礎疾患・体調不良は発汗機能に影響して熱中症のリスクが高まる。



発汗を促すために水分・塩分の補給を

 熱中症を防ぐためには、まずご自身の体温の変化に注意してください。
 外や室内を問わず高温多湿の環境下で、いつもより体温が高くなっているときは、熱中症のリスクが高まっている状態です。
 脱水症状を防ぐために、こまめに水分補給をしましょう。
 汗をかくと水分だけでなく塩分も失われます。塩分の補給も大切です。
 水分と塩分を同時に摂れる「経口補水液」の利用が勧められています。

【ポイント】こまめな水分補給(経口補水液が理想的)で熱中症リスクを下げる。



喉が渇いていない・暑さを感じない

 熱中症で死亡する人の割合は、65歳以上の方が87%を占めています。
 加齢によって発汗機能が低下していることに加え、喉の渇きを感じにくくなり、水分補給が不足する。暑さを感じにくくなり、エアコンを使用控えしている、といったことが関係しています。
 熱中症により屋内で死亡した人のうち、89.9%がエアコンを使用していませんでした。ちなみに、室内の温度が28℃を超えると熱中症による死亡リスクが高くなります。
 室内の見やすい場所に温度計と湿度計を備えておき、暑さを感じていなくても、室温が28℃、湿度が60%を超えるときは、積極的にエアコンを使用してください。

【ポイント】65歳以上の方は体感だけに頼らない熱中症予防を。




~熱中症の応急処置~

 熱中症が疑われる方が近くにいるとき、まず確認しなければならないことは、「意識障害」です。
 意識がない、意識があっても認識が明瞭ではない、言語の混乱といった場合は、迷わずに救急車を呼んでください。
 意識がはっきりしている場合は、「自分で水分を補給できるか」が重要になります。もし、自力で水分補給ができないときは、誰かが無理に飲ませるのは、誤飲する恐れがあって危険です。早急に医療機関を受診してください。
 意識障害もなく、自分で水が飲める場合は、体温を下げるための応急処置をしましょう。
 できるだけ涼しい場所(室内が理想)へ移動させ、服をゆるめ、太い血管がある箇所(首の前側、腋の下、股関節部)に冷たいタオルなどを当てて冷やします。

【ポイント】意識障害と自分で水が飲めるかを確認。問題がなければ、体温を下げるための応急処置をする。