そうしたなか、新型コロナの危険性を軽視する風潮も出てきています。
新型コロナウイルス感染症について、もう一度、見つめ直してみましょう。
感染拡大は収まっていない
新型コロナウイルス感染症の感染法上の分類が5類に移行されて以降、2023年7月~9月にかけて第9波と呼ばれる感染症の流行を迎えました。この時期、沖縄ではとくに患者数が多く、病床がひっ迫する事態になりました。
その後、いったん流行は収まりましたが、今年の1~2月には、事実上の第10波と見られる状況が起きました。
現在、新型コロナの感染拡大は、人々が免疫を得たため、鈍化しているという意見があります。
とはいえ、流行はいまでも小康状態のまま続いています。
特記したいのは、新型コロナの感染拡大が始まった2020年以降、過去4回の夏すべてで流行している点です。
これから夏を迎えますが、感染状況には注意を払う必要があります。
新型コロナの危険性は低下したか?
新型コロナによる死者は、全国で毎月1000人にのぼると推定されています。今年の1~2月にかけては、「約4000人もの方が新型コロナで亡くなったと見込まれる」という報道もあります。
新型コロナの後遺症についても、影響が低下しているとは言い切れない状況が続いています。
国の研究班が3つの自治体で行ったアンケート調査の結果によると、成人の1~2割の人が、感染から2か月以上、せきやけん怠感などなんらかの症状が続いたと答えています。
ほかの調査では感染から1年以上たったあとも、記憶障害、集中力や思考力の低下をあげている人が、それぞれ10%程度いました。
JN1———主流となった変異株
新型コロナだけでなくウイルスには、免疫を回避するために変異する性質があります。現在、新型コロナでは、オミクロン株から派生した、JN1と呼ばれる変異株が主流となっています。
JN1の特徴としては、免疫回避能力が高く、一度感染してもその後、2度3度と感染するケースが見られます。
オミクロン株で注目されたのは、新型コロナが直接の原因というよりも、基礎疾患をもつ方が感染によってその病気を悪化させて亡くなるケースが多かったことです。
こうした特徴はJN1にも見られるため、基礎疾患のある(とくに60歳以上の)方の重症化・死亡リスクは依然として高くなっています。
ウイルスは弱毒化したか?
新型コロナウイルスの弱毒化に対しては、さまざまな意見があります。ただ研究では、いまのところそうした結論は得られていません。
感染傾向は鈍化していますが、JN1がさらに変異する危険も含め、このまま終息するとは考えにくいとされています。
個人としては無視や軽視ではなく、新型コロナが流行したら、感染予防をしっかりと行っていくことが大切になります。
コロナ禍で多くの人が取り組んだ、三密(密閉・密集・密接)を避ける、マスクの着用を含むせきエチケットは、感染対策としていまでも有効です。
また、基礎疾患のある方や65歳以上の方には、ワクチンの接種が勧められています。
【ポイント】
●感染の終息、ウイルスの弱毒化という結論は得られていない。
1 感染の流行は、拡大と鈍化を繰り返している(過去4年、夏場に流行している点にも注意)。
2 新型コロナによる死亡者数は多く、後遺症を訴える人も後を絶たない。
3 オミクロン株の性質を引き継いだ変異株により、基礎疾患をもつ方の重症化、死亡リスクは依然として高い。
●コロナ禍で行った感染対策は、いまでも効果がある。