加齢によって心臓の弁が開きにくくなる、突然死に関わる病気 大動脈弁狭窄症

大動脈弁狭窄症の原因はいくつかありますが、もっとも大きなものは、加齢による動脈硬化です。
高齢化社会が進むにつれて患者数は増加傾向にあり、60歳以上では推定で約284万人に達するという見方もあります。

心臓の弁が開かなくなると

 手動の灯油ポンプを思い浮かべてください。
 ポンプの部分を押すと弁が開き、石油が流れていきます。そしてポンプを押す力を緩めると弁が閉じ、石油の流れが止まります。
 心臓も同じような働きをしています。
 心臓が縮むとき弁が開いて血液が送りだされ、心臓が膨らむと弁が閉じて送りだした血液の逆流を防ぎます。
 大動脈弁狭窄症は、この心臓の弁が硬くなって十分に開かず、通り道が狭くなり、血液の送りだしに支障がでる病気です。
 血液を十分に送り出すことができないと身体に様々な影響がでるだけでなく、最悪の場合、死に至ることもあります。




症状がでるようになると危険

 大動脈弁狭窄症の初期は、自覚症状に乏しいという特徴があります。
 同時に、病気は徐々に進行していくという性質もあります。
 やがて動悸や息切れ、疲れやすさといった症状がでてきますが、これらは「年をとったせい」と思われがちです。
 そして、呼吸困難や激しい胸の痛み、失神といったことが起こるようになると事態は深刻です。
 これらの症状を自覚してから2~3年で突然死するケースが多く見られるためです。


心臓の精密検査を勧められた

 大動脈弁狭窄症を早期に発見するには、定期的に心臓の検査を受けることが最善です。
 そのほかにも、健康診断で心電図に乱れがあって精密検査を受け、大動脈弁狭窄症が発見されることがあります。
 心臓の病気には、大動脈弁狭窄症以外にもさまざまあります。
 精密検査を勧められたときは、かならず循環器科や循環器内科を受診するようにしましょう。



心エコー検査と手術療法

 大動脈弁狭窄症の診断に大きな力を発揮するのが、心臓超音波検査(心エコー検査)です。
この検査で、大動脈弁の狭窄の度合いと、心臓の大きさや動きを調べます。
狭窄した心臓の弁は、自然治癒することはありません。
このため大動脈弁狭窄症が危険な状態であるときは、大動脈弁を切り取って、新しい弁に取り替える手術(大動脈弁置換術)が行なわれます。
この手術法には、2種類あります。

【開胸手術】胸を切開して、狭窄している心臓弁を人工弁に取り換える。
【カテーテル治療(TAVI(タビ))】太もものつけ根の血管からカテーテル(細い管)を使って心臓に人工弁を運び、留置する。