脂質異常症は、重篤な病気をもたらすもっとも大きなリスクのひとつになっています。
血液中の脂質がもたらす危険
脂質は、糖質やたんぱく質と並ぶ三大栄養素のひとつで、身体活動に必要なエネルギーを生み出します。また、細胞膜やホルモン、胆汁酸を生成するのにも脂質は欠かせません。脂質は、肝臓で合成されるか食事から摂取され、血液によって全身に運ばれます。
しかしある要因によって、血液中の脂質が基準値(表参照)から外れた状態になることがあります。
これを、脂質異常症と言います。
脂質異常症が続くと、コレステロールが血管の壁に溜まって動脈硬化を引き起こし、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞、狭心症といった、命に関わる重篤な病気の原因になります。
コレステロールと中性脂肪
LDLコレステロールは、肝臓で作られた脂質を全身へ運ぶ役割を担っています。もうひとつのHDLコレステロールは、脂質を回収して肝臓へ戻す働きをしています。
HDLコレステロールが減ると、LDLコレステロールの増加を抑えられなくなります。
このふたつは、適正なバランスで存在することで健康な状態が維持されます。
中性脂肪は、身体のエネルギー源となる脂質です。
エネルギーとして使われなかった分は、皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられます。
中性脂肪が増えすぎると、LDLコレステロールとHDLコレステロールのバランスに悪影響を与えます。
飽和脂肪酸の摂り過ぎ
LDLコレステロールは、全体の70~80%が肝臓などで作られ、残りの20~30%が食事から摂取されるといわれています。LDLコレステロールが増加する原因は、食事やストレス、体質・遺伝、肥満など様々あると考えられています。
そのなかでも食事における「飽和脂肪酸」の摂り過ぎは、大きな原因となっています。
飽和脂肪酸が含まれる食材は、肉の脂身や鶏肉の皮、バター、牛乳、生クリームなどが挙げられます。インスタントラーメンやスナック菓子にも注意が必要です。
内臓脂肪による肥満
脂質異常症におけるHDLコレステロールと中性脂肪の診断基準の数値は、メタボリックシンドロームでも使用されています。このことから、メタボリックシンドロームを解消することが、脂質異常症の予防につながるといえます。
内臓脂肪は、消費カロリーよりも摂取カロリーが多い場合に蓄積されていきます。
消費カロリーを増やす運動習慣。摂取カロリーを抑える食生活が大切になります。
同時に、魚類や大豆製品、植物油などの「不飽和脂肪酸」が多く含まれる食品の摂取が勧められています。
脂質異常症を発見・治療するには
厚生労働省の調査によると、日本の成人男女の約3割、60歳代では男女とも四人に一人に脂質異常症が疑われるといった結果になっています。脂質異常症は自覚症状がないため、健康診断で行なわれる血液検査で発見する必要があります。
脂質異常症であると診断された場合は、食事や運動といった生活習慣の見直しから治療が始まります。
生活習慣の見直しだけではコレステロールや中性脂肪の数値に十分な変化が現われない場合や、合併症の発症リスクが高い場合は、薬物療法が行なわれます。
健康診断で脂質異常症の疑いがあるとされたときは放置せず、かかりつけの医師や生活習慣病の専門医にご相談ください。