甲状腺機能亢進症であり、自己免疫疾患のひとつ
バセドウ病は、甲状腺機能亢進症のなかでも代表的とされる病気です。甲状腺は、身体の新陳代謝を促進するための甲状腺ホルモンを分泌する臓器で、首の前側、のど仏のすぐ下にあります。
バセドウ病は、自己免疫疾患のひとつでもあります。
自己免疫疾患は、自分の身体を異物とみなす抗体が、自身の臓器や皮膚、関節などを攻撃することで発症します。
また自己免疫疾患には、坂口志文教授(ノーベル生理学・医学賞受賞)が発見した、「制御性T細胞」の異常が関係しています。
バセドウ病では、自己免疫が甲状腺を刺激しつづけることで働きが活発になりすぎ、甲状腺ホルモンが過剰に産生されます。
結果的に、身体には負担がかかりつづけ、さまざまな症状を引き起こします。
バセドウ病の症状はさまざま
バセドウ病という病名は、この病気について1840年に研究発表したドイツの医師、カール・フォン・バセドウによって名付けられました。氏の発表により、メルセブルグの三徴と呼ばれる、①甲状腺の腫れ、②頻脈、③眼球突出の三つの症状が知られるようになりました。
さらに現代では甲状腺の腫れに関して、甲状腺全体が腫れるだけでなく、左右どちらかが腫れる、あるいはまったく腫れがないケースもあることがわかってきました。
また、バセドウ病を発症すると、内臓――とくに、心臓や腸が過剰に働くようになり、頻脈だけでなく不整脈や心不全といった心臓の病気や、頻繁な下痢といった腸の病気を引き起こす原因になります。
甲状腺ホルモンは全身に影響を与えるため、眼球突出のほかにも、疲れやすい、手指の震え、大量の発汗、食欲が増進しているのに痩せる、など症状の現われ方はさまざまです。

ホルモンや抗体、甲状腺の状態を調べる
バセドウ病の診断には、血液検査とアイソトープ(放射性ヨウ素)検査、超音波検査などが行なわれます。●血液検査 甲状腺ホルモンの濃度や抗体の値を調べる。
●放射性ヨウ素(アイソトープ)検査 放射性ヨウ素が甲状腺に取り込まれる率を調べる。
●超音波検査 甲状腺の大きさや腫瘍の有無を調べる。
甲状腺ホルモンの産生を抑える
バセドウ病の治療には、つぎの三つの方法があります。●抗甲状腺薬 甲状腺ホルモンの産生を抑え、血液中の甲状腺ホルモンの濃度を下げる内服薬。
●アイソトープ(放射性ヨウ素) 治療 カプセル状の薬を服用し、甲状腺にアイソトープを取り込ませて、甲状腺細胞を破壊することで甲状腺ホルモンの産生を抑える。
●手術療法 甲状腺腫を手術によって切除することで、バセドウ病の早期治癒を目指す。
かかりつけ医か、甲状腺の専門医のいる病院で相談を
バセドウ気は全身に及ぶ病気なため、その影響で不眠やうつ症状などを起こすリスクも無視できません。自己判断で軽視しないようにしましょう。この病の疑いがある場合は、かかりつけ医に相談するか、甲状腺の専門医のいる病院への受診が勧められています。