高血圧 血圧をさげるふたつの鍵

血圧は健康診断だけでなく、医療機関に備えられているものや、家庭用の血圧計を利用して、数値を定期的に確認しましょう。
収縮期血圧140mmHg/拡張期血圧90mmHg以上となっていたら、血圧をさげる取り組みを始めてください。
そこには、ふたつの鍵があります。


高血圧は命に関わる

 正常値より高い圧力が血管にかかり続ける状態―これを、高血圧と言います。
 高血圧が改善されないと血管の伸縮性が損なわれて硬くなり(動脈硬化)、破れて出血するリスクが高まります。
 こうしたことが脳や心臓で起こると、命に関わる重篤な病気を引き起こしたり、後遺症によって生活が大きく制限を受ける状態を招きかねません。


食事と運動がひとつ目の鍵

 高血圧は、原因が特定できない「本態性高血圧」と、なんらかの病気が原因で起こる「二次性高血圧」があります。
 患者数の割合としては、本態性高血圧が約9割を占めます。
 本態性高血圧の原因を特定することは困難ですが、塩分の摂り過ぎ、肥満、過度の飲酒、運動不足、ストレス、喫煙といったことが関係していることはわかっています。
 高血圧(本態性高血圧)を患う方にとって、食事療法・運動療法による生活習慣の改善が、血圧をさげるためのひとつ目の鍵となります。



診断基準と受診の目安

 高血圧の診断基準は、(医療機関で測定した場合) 収縮期血圧140mmHg/拡張期血圧90mmHg以上となっています。
 なお2024年4月から、特定健診における高血圧の「医療機関受診勧奨基準」が変更になりました。

 ①収縮期血圧140以上160mmHg未満、または拡張期血圧90以上100mmHg未満=生活習慣を改善する努力をしたうえで、数値が改善しないなら医療機関を受診する。
 ②収縮期血圧160mmHg/拡張期血圧100mmHg以上=すぐに医療機関を受診する。



薬物療法が二つ目の鍵

 高血圧と診断された場合、年齢、性別、高血圧の重症度、糖尿病や脂質異常症、なんらかの病気の有 無・状態など、さまざまなことを考慮のうえ、高血圧の治療薬(降圧薬)による治療が行なわれます。
 これが、血圧をさげるためのふたつ目の鍵になります。
 降圧薬は、長期間の服用が必要になります。このため、薬の安全性はとても高くなっています。

【おもな降圧薬】
カルシウム拮抗薬 日本でもっとも処方されている降圧薬。血管を収縮させるカルシウム(Ca)イオンが血管細胞に流入するのを阻害することで、血管を拡張させて血圧をさげる。
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB) アンジオテンシンⅡという血圧上昇にも関わる物質の作用を抑える。
アンジオテンシン変換酵素阻害薬 (ACEI) アンジオテンシンⅠをアンジオテンシンⅡへ変換する酵素の働きを阻害する。
利尿薬 尿の排泄を促し、血液中の水分量を減らして血圧をさげる。




「減塩」のコツ

 高血圧の予防や改善に取り組むときに、真っ先にあげられるのが「塩分摂取量」です。
 日本人の塩分摂取量の平均は、男性10.5g、女性9.0gとなっています。
 食塩摂取の1日あたりの目標量は、成人男性で7.5g未満、女性で6.5g未満。高血圧の重症化を予防するには、男女とも6g未満になります。
 ちなみに、カップラーメン1個に含まれる塩分量は約6g。牛丼(並盛)に味噌汁をつけた場合は約5gになります。
 日本人の塩分摂取量が多いことがわかると同時に、減塩の難しさも感じます。
 減塩には、どう取り組めば良いのでしょうか?
 食事における塩分の約7割は、「調味料」から摂取しています。
 このため食塩はもちろんですが、醤油、味噌、ソース、マヨネーズ、ケチャップ、ドレッシング――これらの使用量を減らす、減塩タイプのものに変更する――こうしたことが塩分の摂取量を減らす第一歩になります。
 調味料の減量や変更は味に関わることなので、最初は不満を覚えるかもしれません。しかし慣れていけば、薄味の料理も美味しいと感じるようになっていきます。