内臓脂肪型肥満を解消するには

「内臓脂肪型肥満」をベースにして、高血糖・脂質異常・高血圧のうち、いずれか2つ以上が組み合わさった状態がメタボリックシンドロームの診断基準となっています。
メタボの状態が続くと、心臓疾患や脳血管疾患といった命に関わる病気を発症する恐れが高くなります。ではなぜ、内臓脂肪型肥満が深刻な病気のベースとなっているのでしょうか?



内臓脂肪が増えすぎると

 食事を摂ることで身体に吸収されたエネルギーのうち、使いきれなかった分は、脂肪として蓄えられます。
 脂肪には2種類あって、皮下脂肪と内臓脂肪に分けられます。
 このうち内臓脂肪は、腸や肝臓の周りにつく脂肪です。
 空腹時に体内のエネルギーが不足すると、内臓脂肪は素早く分解されてそれを補充します。
 また内臓脂肪には、臓器を守る役割や、臓器の位置を保持する役割もあります。
 さらに内臓脂肪は、人間の生体維持にかかわる物質(生理活性物質)の合成・分泌することで、血糖値やコレステロール値、血圧のコントロールを行なっています。
 ところで、内臓脂肪が増加すると、生体維持にどのような悪影響が及ぶのでしょうか。



インスリンの働きの倍下

 食事を摂ると、そのなかに含まれる糖質によって血糖値があがります。この血糖値をさげる役割を唯一行なっているのが、インスリンです。
 脂肪からは「アディポネクチン」というインスリンの働きをよくする物質が分泌されますが、内臓脂肪が増えるとその量が減ります。
 これによりインスリンの働きが低下し、やがては高血糖(糖尿病)へとつながっていきます。



動脈硬化を進行させる

 血液中に含まれる脂質のなかに、中性脂肪(トリグリセライド、TG)があります。
 中性脂肪が増加すると、血管壁に付着したコレステロールを回収するHDLコレステロールが減少し、血管壁にコレステロールを付着させるLDLコレステロールが増えます。結果的にこのことは、動脈硬化を進行させます。
 エネルギーとして使用されなかった中性脂肪は、内臓脂肪として蓄えられます。つまり内臓脂肪が多いということは、血液中の中性脂肪も多いことになります。



高血圧の悪化要因に

 内臓型肥満の方が高血圧を発症する確率は、そうでない人に比べて2~3倍高くなります。
 脂肪細胞からは、血管を収縮させる交感神経を活発にする物質が分泌されています。内臓脂肪の増加はこの働きに悪影響を及ぼし、血圧をあげる原因となります。
 また、インスリンの効きが悪くなることで過剰な分泌が起こると血圧の上昇をもたらします。
 さらに、内臓脂肪(中性脂肪)の増加によって血管が硬くなることで、血液を循環させるための血圧はさらに高くなります。



食生活と運動習慣の見直しを

 内臓脂肪の増加と糖尿病・脂質異常・高血圧の三大生活習慣の関係を見てきました。
 では、内臓脂肪を減らすには、どうしたらよいでしょうか?それには、食生活と運動習慣の見直しが大切になります。
【食生活】
①肉類だけでなく、魚類や野菜類、豆類、乳製品をバランスよく摂取する。
②脂肪分と塩分の摂り過ぎに注意する。
③アルコールはカロリーが高く、内臓脂肪の増加につながるので、習慣的な過剰摂取を避ける。
【運動】
 有酸素運動は身体を動かすときに、酸素を吸い込みながら、体内の糖質や脂質を利用します。
 内臓脂肪を減らすには、もっとも手軽にできて、効果的な運動となっています。
 代表的なものは、ジョギング、ウォーキング、サイクリング、水泳、エアロビクスですが、踏み台昇降、スクワット、フラフープなども含まれます。
 洗濯物を干すことや買い物、散歩といったことも、ここに含んでもよいでしょう。
 有酸素運動は、開始後20分程度で内臓脂肪の消費が始まります。一日20分以上の有酸素運動を毎日の習慣にしましょう。