心臓の動脈が狭くなる
心臓は筋肉でできています(心筋)。心筋は、冠動脈を流れる血液から酸素や栄養を受け取ることで活動します。しかし、動脈硬化によって冠動脈が狭くなると心筋への血液の流れが阻害され、締めつけられるような胸痛の発作や、不整脈・心房細動といった命にかかわる症状を引き起こす恐れがあります。
これが、狭心症です。
ちなみに、狭くなった冠動脈に血栓(血の塊)がつまると血液がまったく流れなくなり、心筋が壊死します。これは心筋梗塞と呼ばれ、致死的な疾患になります。
発作の出方による分類
狭心症は、おもに3つのタイプに分けられています。【労作性狭心症】
運動時や重いものを持ちあげたとき(労作)、心筋に必要な血液が供給されず発作を起こす。
症状は数分から10分程度で治まるが、治まらないときは心筋梗塞を起こしている恐れが高い。
【不安定狭心症】
労作性狭心症より、さらに強い胸痛が起こる。発作の持続時間が長くなる。発作の頻度が増す。急性心筋梗塞により近づいている状態で、きわめて危険な状態。
【冠攣縮性(かんれんしゅくせい)狭心症】
冠動脈が痙攣し、一時的に心筋への血流が悪くなることで起こる。夜間や早朝、朝方などの安静時に発作が起こることが多い。

狭心症の診断と対処
狭心症の診断には、どのような状況で発作が起きたか問診し、心電図や運動負荷心電図(運動によって負荷をかけて心電図の変化を見る)、ホルター心電図(携帯型の心電計により日常の心電図を記録する)、超音波検査、冠動脈CT検査、カテーテル検査などが行なわれます。狭心症と診断されている方や、胸を圧迫するような痛みが10分以上続く発作が起きた場合は、すぐに救急車を呼んでください。
発作が数分で治まったときは、かかりつけ医に相談するか、循環器内科を受診しましょう。
薬物療法と手術療法
狭心症の治療では、症状によって薬を使い分ける薬物療法が行なわれ、必要と判断された場合は、手術療法が行なわれます。[代表的な薬の種類と目的]
○ニトログリセリン―発作が起きたときのために携帯する薬。
○ベータ遮断薬―心拍数を抑え、心筋を守る薬。
○カルシウム拮抗薬、硝酸薬―血管を広げる薬。
○スタチン―動脈硬化を改善する薬。
狭心症の手術には、「カテーテル治療」と「バイパス手術」があります。どちらを選択するかは、血管が狭くなっている箇所の範囲や数、年齢、持病などを考慮して選択されます。
○カテーテル治療―カテーテルという細い管を血管内に挿入し、狭くなった部分を内側から広げ、ステントと呼ばれる網目状の器具を植え込む手術。
○バイパス手術―身体のほかの箇所にある血管を使って、心臓の冠動脈にバイパス(迂回路)を作る手術。