インフルエンザの流行に備えて

インフルエンザにおいて、患者数の増加と流行期間の長期化という、ふたつの問題が生じています。重症化リスクの高い65歳以上の方と、患者数の多い14歳以下の方は、とくに注意が必要です。



昨シーズンの動向

 2023年5月、宮崎県と大分県の学校で生徒・教職員を合わせて500人に上るインフルエンザの集団感染が起こり、次のような理由で大きなニュースとなりました。

①新型コロナの感染法上の位置づけが、5類に移行したとの同時期に起こったこと。
②インフルエンザの感染者数は、それまで低い水準に抑えられていたこと。
③12~3月が流行期のインフルエンザにおいて、時期のずれた5月に集団感染が発生したこと。

 また、2022年12月から2024年5月まで、全国約5000か所の定点医療機関から報告されたインフルエンザ患者数は、流行の目安となる1人を超え続けるという異例の事態が起こりました。
 昨シーズンのインフルエンザ全体の報告数は、その前のシーズンより4.2倍に増加しています。



流行が再び起こったのはなぜか

 インフルエンザの流行が再び起こった理由としては、次の3つが考えられています。

①2シーズン流行しなかったため、インフルエンザウイルスに対する免疫を持っている人が減少した可能性。
②感染対策に対する、意識・行動の変化。
③海外でもインフルエンザが流行していることから、人的交流の活発化が影響。

 インフルエンザの2024/2025年シーズンは、2024年9月2日から2025年8月31日までとなっています。
 今シーズンも、インフルエンザの流行と長期化は起こると予想されていることから、流行前から対策をしていく必要があります。



感染症対策とワクチン接種の有効性

 新型コロナ対策として行なった「3密を避ける」「マスクの着用」は、結果的にインフルエンザの感染者数を大幅に減らすという副産物を生みました。
 かつてのような社会全体の取り組みは望めませんが、こうした感染対策は、個人的な感染対策としても有効です。
 インフルエンザの重症化を防ぐには、ワクチン接種が大きな抑止力になります。65歳以上の方でワクチン接種を受けた人は、死亡リスクが5分の1、入院リスクが約半分に減少するという報告があります。
 65歳以上の方は、定期接種として公費(一部自己負担あり)でワクチン接種を受けられます。流行前の接種が勧められています。





鼻から接種する新しいワクチン

 今シーズンから、経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(製品名・フルミスト点鼻液)の使用が開始されました。
 このワクチンは、注射によって接種するのではなく、鼻の粘膜にスプレーすることで用います。
 現在使用できる対象年齢は、2歳~19歳未満となっています。
 違いとしては、注射するタイプのものが「不活性ワクチン」であるのに対して、フルミスト点鼻液は「生ワクチン」となっている点です。生ワクチンには、毒性や病原性を低下させた生きたウイルスが使われますが、海外では複数の国ですでに使用されていて、安全性は担保されています。
 インフルエンザに感染する人の半数は14歳以下となっています。さらに、入院する人の年齢別の割合でも、10歳未満の小児が35.1%を占めます。
 従来のワクチンと新しいワクチン――子どもの重症化を防ぐためにも、ワクチン接種を検討してください。




***インフルエンザの特徴***
熱:突然、38℃以上の発熱が起こり、1~3日、高熱が続く
治癒:多くの場合、発症から3~5日で軽快し、1週間程度で治る
症状:発熱のほかに、筋肉痛、関節痛、倦怠感などの全身症状が現われる
重症化:肺炎、中耳炎、熱性けいれん、急性脳症など
治療薬:発症から48時間以内であれば、インフルエンザ治療薬が効く