食道はとても”薄い”器官
口から入ったものは基本的に、空気は気道を通って肺へ、飲食物は食道を通って胃に入ります。食道の長さは約25cm、太さは2~3cm、厚さは約4mmとなっています。
食道は粘膜に覆われていて、この粘膜の一番内側が扁平上皮です。日本では、食道がんの9割が扁平上皮がんとなっています。
食道がんの初期には自覚症状がない
食道がんによる死亡者数は、年間1万人を超えるとされています。5年生存率は40%ほどで、胃がん65%や大腸がん70%に比べて低い数字になっています。
その背景には、食道はがんの初期は自覚症状がないという点。さらに食道の壁は(胃や腸と比べて)脆弱なため、周囲の臓器や組織にがんが広がりやすいことがあげられます。
ちなみに、飲食時に胸に違和感がある、食べものがつかえる感じがする、熱いものが胸に滲みるといった症状がある場合、その原因が食道がんならば、すでに進行している恐れがあります。
中高年で飲酒・喫煙習慣がある
食道がんに罹患した方の数は、年間で2万人を超えています。年齢的に見ると60~70歳での発症が7割を占め、男女比では男性5に対して女性1と男性のほうが多くなっています。
食道がんの危険因子として知られているのが、飲酒と喫煙です。
飲酒をすると、アルコールは分解されて「アセトアルデヒド」という物質が生じます。これは、発がん性が指摘される物質です。
アセトアルデヒトは、さらに分解されて酢酸になりますが、日本人の多くは、この物質を分解しにくい体質であることが指摘されています。
そしてタバコには、さまざまな発がん性物質がふくまれていることは、多くの方がご存じのとおりです。
早期発見のために内視鏡検査
食道がんの早期発見には、内視鏡による検査と、バリウムによる透視検査が有効です。ただ、食道にはバリウムが付着しにくいため、内視鏡検査のほうが食道がんの早期発見にはより重要で、良い結果をあげています。
とくに、60歳を過ぎている男性で飲酒・喫煙習慣のある方は、バリウム検査だけでなく、定期的に内視鏡検査を受けるようにしましょう。
初期であれば食道を温存できる
食道がんの治療には、内視鏡的切除、手術、放射線治療、薬物療法(化学療法)があります。これらの治療は、がん細胞が食道の粘膜に対してどれだけの深さと広がりがあるか、リンパ節への転移の有無、遠隔した臓器への転移などをもとにしたステージ(病期)によって、患者ご自身の希望や身体の状態を考慮して、単独あるいは複合して行なわれます。
0期(がんが粘膜内に留まっていて、リンパ節転移がない)の食道がんでは、食道を温存する内視鏡的切除術が推奨されています。5年生存率は、およそ90%と報告されていることからも、早期発見がとても重要になります。