動脈硬化が原因で心臓の弁に異常が!

大動脈弁狭窄症

 大動脈弁狭窄症――この病名には馴染がないかもしれませんが、「心不全を起こす病気のひとつ」といえば、その深刻さがおわかりいただけると思います。しかし医療の発展により、大動脈弁狭窄症は治すことが可能ともなってきています。

大動脈弁狭窄症とは

 心不全は、心臓に機能低下が起こっている状態です。血液を身体に十分に送り出すことができないため、身体に様々な影響がでるだけでなく、死に至るケースも多くあります。統計によると、日本では毎年7万人が心不全で亡くなっています。心不全のなかで、心臓の弁に異常が起こる病気が「心臓弁膜症」です。心臓の弁は心臓の動きに合わせて開閉することで、送り出した血液が心臓に逆流することを防ぎます。この心臓の弁が硬くなって動きが悪くなり、開きが小さくなる――このひとつが「大動脈弁狭窄症」です。


大動脈弁狭窄症の原因と症状

 大動脈弁狭窄症の原因とされているのは、加齢による動脈硬化です。このため、高齢化社会が進むにつれて、大動脈弁狭窄症の患者数は増加しています。日本国内の潜在患者数は、推定で100万人に達するという意見もあります。大動脈弁狭窄症の初期は、自覚症状に乏しいという特徴があります。病気の進行はゆっくりで、病気が進むにつれて胸の痛みや息苦しさ、手足のむくみ、失神といった症状が起こります。しかし、自覚症状を感じた時点では、病気がかなり悪化しているケースが多くあり、突然死の原因にもなっています。




大動脈弁狭窄症の治療(弁置換術)

 大動脈弁狭窄症の発見に大きな力を発揮するのが、心臓超音波検査(心エコー検査)です。検査で重症化した大動脈弁狭窄症が見つかった場合、障害を受けた心臓の弁は自然治癒することがないので、心臓の弁を取り換える手術(弁置換術)が行なわれます。比較的若い年齢での弁置換術では、特殊なカーボンで作られた「機械弁」と呼ばれるものを心臓に植え込み、弁の代わりとします。一方、患者が65歳以上の場合は、牛の心膜や豚の心臓弁を人間に合わせて処理して作った「生体弁」がおもに植え込まれます。80歳以上の場合には、経カテーテル大動脈弁置換術が行なわれるようになってきています。




大動脈弁狭窄症(発見と治療)

 大動脈弁狭窄症は、弁置換術の発達により、決して治らない病気ではなくなりました。とはいえそのためには、できるだけ早期に発見することが必要となります。また、弁置換術を受けたことのある人がまだ少ない、という問題点も指摘されています。大動脈弁狭窄症の潜在的な患者のうち、多くの人が治療を受けることなく、突然死を迎えているという現実があります。こうしたことを防ぐためには、心不全や大動脈弁狭窄症について知り、症状が起こるまえに定期的に心臓の検査を受けて、病気を発見することが重要になります。