メノポハンド(更年期の手の不調)について

メノポハンドは、更年期を意味する言葉「メノポーズ(Menopause)」と、手「ハンド」を組み合わせた言葉で、日本手外科学会によって2022年に命名されました。 言葉の由来の通り、更年期(一般的に45〜55歳)の女性に起こる、さまざまな手指の不調を現しています。 メノポハンドを引き起こす原因のひとつとして、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌の減少が影響していると考えられています。

女性ホルモンの減少が影響

 手指の関節や腱(筋肉と骨をつなぐ組織)の周囲は、「滑膜」によって覆われています。エストロゲンの分泌が減少すると、滑膜の保護作用が低下し、炎症が起こりやすくなります。
 滑膜に炎症が起こると、痛みやこわばりが生じ、進行すると関節の変形につながることがあります。そしてここに手指の負担がつづくと、病気が悪化するリスクが高くなります。
 メノポハンドはひとつの病気ではなく、いくつかの手指の病気の総称となっています。
 代表的な病気と、その症状を見ていきましょう。




関節に起こるメノポハンド

■ヘバーデン結節 指先の第一関節に症状が現われる。
■ブシャール結節 指先の第二関節に症状が現われる。
 ヘバーデン結節・ブシャール結節はともに、関節が腫れて結節(こぶ)ができる病気です。痛みや手指の動かしにくさ、関節の変形につながります。
■母指CM関節症 ドアノブを回す、瓶やペットボトルの蓋を開ける、タオルを絞るといったときに、母指(親指)の付け根の関節(CM関節)に痛みが生じます。悪化すると亜脱臼や関節の腫れ、変形、その影響で指先の関節が曲がる「スワンネック変形」が起こることがあります。


腱鞘炎の一種であるメノポハンド

■ばね指(弾発指) 指を動かすための腱と、それを包む腱鞘の間に炎症が起こる腱鞘炎のひとつで、指を曲げ伸ばすときに「カクン」と引っかかることが特徴です。悪化すると指が曲がったまま、伸びなくなることもあります。
■ドケルバン症候群 手首の親指側に起きる腱鞘炎のひとつで、親指側の手首に痛みや腫れが生じます。


神経への圧迫によって起こるメノポハンド

■手根管症候群 親指、人差し指、中指、薬指(親指側半分)に痺れや痛みが生じます。朝方に症状が強く出るという特徴があります。手首のなかを通る正中神経(手の動きや感覚の中心的役割を果たす神経)が、圧迫されることで発症します。症状が進むと、指を使った日常の細かい動作が困難になります


メノポハンドの保存療法

 メノポハンドの治療には、保存療法と手術療法があります。
 保存療法は、テーピングやサポーター、専用の装具によって関節を固定して患部の負担を軽減します。また指を使うときの動作を見直すことで、症状の進行を遅らせます。
 痛みには、消炎鎮痛剤(内服薬・湿布)を用いたり、痛みの強さによっては関節内や腱鞘内へのステロイド注射が行なわれます。


メノポハンドの手術療法

 保存療法では十分な効果が得られず、日常生活に大きな支障がある場合は、手術療法が検討されます。
【病名とおもな手術療法】
○ヘバーデン結節 指関節固定術(痛みの原因となる関節を固定して、痛みをなくす。指の曲げ伸ばしはできなくなる)。
○ブシャール結節 人工関節置換術(痛みの原因となる関節を取り除き、シリコンや金属などの人工関節に置き換える)。
○母指CM関節症 関節形成術(傷んだ骨の一部を切除して、自分の腱で靭帯を再建することで痛みを改善する)。 ○ドケルバン症候群・ばね指 腱鞘切開術(厚くなった腱鞘を切開して腱の動きを改善することで、痛みを軽減する)。
○手根管症候群 手根管開放術(横手根靭帯を切開して正中神経への圧迫を解除することで、痛みや痺れを改善する)。
 メノポハンドの手術は、強い痛みや痺れを抑える効果が高く、多くの場合、日帰りで行なわれます。
 また内視鏡を用いた手術もあり、術後の痛みが少なく、早期の回復も期待できます。


まとめ

○手指の痛みや痺れ。
○朝起きると手がこわばる。
○ペットボトルの蓋が開けにくい。
○指が曲がったまま伸びない。
 こうした症状がある方は、早めに整形外科を受診し、医師に相談してください。