高齢世代の女性に多く、「誰かとの激しい口論」といったストレスさえも発症原因となる恐れがあります。
心臓の片側が「たこつぼ」の形に
心筋症は、心臓の動脈や弁の働きは正常なのに、心臓の筋肉(心筋)に異常が起こる病気です。たこつぼ型心筋症のほとんどは、血液を送り出す役割をする心臓の「左心室」で起こります。
左心室は、心筋を収縮することで血液を送り出します。
しかし、たこつぼ型心筋症を発症すると、左心室の下側(心尖部)の心筋の収縮が阻害された状態になります。その一方、左心室の上側(心基部)の心筋は過剰に収縮します。
これによって、心臓の働きが著しく低下します。
このときの左心室の形がたこつぼに似ていることから、この病名がつけられました。
急性心筋梗塞と似た症状が起こる
たこつぼ型心筋症を発症すると、突然、胸の痛みや圧迫感、動悸、息苦しさ、吐き気を感じます。また、前触れもなく失神してしまうケースもあります。これらの症状は、急性の心筋梗塞(心臓の動脈が詰まって起こる)と似ています。
急性心筋梗塞では、一刻も早く救急車を呼んで専門の医療機関に搬送することが必要です。
たこつぼ型心筋症と急性心筋梗塞は症状だけでは区別がつかないので、同様の対処をするようにしましょう。
ストレスが原因で起こる病気
たこつぼ型心筋症が起こる原因は、精神的、身体的なストレスとされています。精神的なストレスには、身内の不幸や離婚、地震や水害の被災といったことのほかに、激しい口論もあげられています。これらは、誰もが身近な問題として抱えているリスクと言えるでしょう。
一方、身体的なストレスとしては、感染症や呼吸器疾患、脳や腎臓の疾患。また、手術後のストレスも含まれています。これらのリスクのある方は、注意が必要です。
たこつぼ型心筋症は、女性の患者が男性より多くなっています。女性は高齢の患者が多いのに対して、男性は若い世代にも見られること。女性は精神的なストレスが原因となっているのに対して、男性は身体的なストレスによる患者が多いといった点があります。
また、カテコラミンという交感神経興奮物質の過剰放出と、心筋の異常反応が関係していることもわかっています。
自然治癒が見込めるが軽視は禁物
たこつぼ型心筋症には、特別な治療法はありません。この病気を治すには、安静にして、ストレスを取り除くことが大切になります。
通常、心筋の収縮異常は1~2週間程度、長くても数か月で回復します。このため多くの場合、1週間程度入院して経過を観察しながら自然に治るのを待ちます。
たこつぼ型心筋症は、これまで比較的予後の良い病気と考えられてきました。しかし近年では、合併症や基礎疾患と関連した死亡が多く報告されています。