手指の関節の腫れや痛み——どっちの病気? 腱鞘炎と関節リウマチ

腱鞘炎の多くが手指の使い過ぎによって起こるのに対して、関節リウマチは免疫機能の異常によって発症します。腱鞘炎が発症部位に留まるのに対して、関節リウマチは全身に症状が広がる恐れがあります。

腱鞘炎とは

 腱鞘炎の起こる「腱」と「腱鞘」とは、なんでしょうか?
 指は、筋肉から骨に沿って伸びる紐のような組織によって、曲げ伸ばしすることが出来ます。
 この紐のような組織が、腱。そして、腱を骨に沿わせる役割をしているのが、腱鞘です。
 ベルトとベルトを通す輪を想像するとわかりやすいかと思います。ベルトにあたるのが腱で、ベルトを通す輪が腱鞘です。
 腱鞘炎は、腱と腱鞘が擦れて炎症が起こることで発症します。

腱鞘炎の症状

 腱鞘炎になると、手指や手首に腫れや痛みが起こります。
 腱鞘炎を放置していると、腱と腱鞘の動きがスムーズにいかなくなり、曲げ伸ばしに支障が出るようになります。
 代表的な症例に、「バネ指」と「ドケルバン病」があります。
 バネ指は、曲げた指を伸ばすとき、滑らかではなく、跳ねたような動きになります。
 ドケルバン病は、手首の腱鞘で起こります。手首だけでなく、親指を動かすと強い痛みがでるのが特徴です。
 こうした状態を放置しておくと、やがては、関節の曲げ伸ばしそのものができなくなることがあります。


腱鞘炎になりやすい人

 腱鞘炎は、手を使う機会の多い人によく起こります。パソコン作業といった比較的軽めの作業でもリスクになります。
 更年期以降の女性や妊娠・出産期の女性にも、腱鞘炎はよくみられます。また、糖尿病の方や人工透析を受けている方、関節リウマチの方も、腱鞘炎が起こりやすくなっています。
 該当する方や、これらの条件が複合している方は十分に注意し、症状が悪化するまえに整形外科を受診するようにしてください。


関節リウマチは自己免疫疾患

 関節リウマチは関節に炎症が起き、腫れや痛み、変形が生じる病気です。
 関節を包む「滑膜」という薄い膜に慢性的な炎症が起き、関節に腫れや痛みをもたらします。病気が進むと、骨や軟骨を破壊して関節を変形させ、やがて介助がなくては生活できないほど症状が深刻化するケースもあります。
 関節リウマチの原因は、免疫の異常です。本来であればウイルスや細菌から身体を守る免疫機能が異常を起こし、滑膜や骨、軟骨を外敵とみなして攻撃し、壊してしまいます。
 この病気は性別や年齢を問わず起こりますが、30~50代の女性の発症が多くなっています。


関節リウマチには早期治療を

 手足に起こる病気としてよく知られる、関節リウマチと腱鞘炎ですが、特定の部位に起こる腱鞘炎と違って、関節リウマチは症状が全身に広がっていく恐れがあります。
 かつては、関節リウマチの進行を止める方法はありませんでした。
 しかし、「免疫異常を起こりにくくする薬」が登場して治療が進歩した現在、「早期に治療」を行なうことで、寛解(病気が落ち着いて安定している状態)を保つことが可能になってきています。

関節リウマチの初期症状をチェック

 関節リウマチの早期発見のために、次のような症状を見逃さないようにしましょう。
●朝起きると関節がこわばっているが、30分~1時間で普段どおりに動くようになる。
●痛む関節を触ると、やわらかくブヨブヨしている。
 こうした症状がある方は、医療機関で検査を受けるようにしてください。