良性発作性頭位めまい症とは
朝起きたときや頭の位置を変えたときに、目がぐるぐる回るめまいに襲われる———「良性発作性頭位めまい症」は、耳の器官に異常が起こることで発症します。耳の奥には、「三半規管」があります。三半規管のなかはリンパ液で満たされたおり、頭を動かしたときにリンパ液の流れが変わることで、前後・左右・上下といった体の平衡感覚を得ることが出来るようになっています。
良性発作性頭位めまい症は、この三半規管のなかに、剥がれた耳石(カルシウムでできた小さな石)が入り込み、リンパ液の流れを乱すことでめまいが起こります。
良性発作性頭位めまい症になりやすい人
良性発作性頭位めまい症の患者は、普段、デスクワークをしている人や寝返りを打つ回数の少ない人に多くみられます。このことから、長時間同じ姿勢で頭をあまり動かさずにいることが、良性発作性頭位めまい症の発症に影響しているのではと考えられます。また、耳石は加齢とともに剥がれやすくなっていきます。良性発作性頭位めまい症は、60~70代の女性に多く見られるため、骨粗しょう症の影響も指摘されています。
良性発作性頭位めまい症の対処法&治療法
良性発作性頭位めまい症には、めまいのする方向へ頭を何度か動かすことが有効です。それによって耳石の位置が変わり、めまいが治まります。また、めまいのする側に寝返りを何度かうつことも効果があります。耳鼻咽喉科では、良性発作性頭位めまい症が疑われる場合は、一般的な耳の検査のほかに、「眼振検査」が行われます。
眼振検査とは、頭の動きに合わせて眼が振り子のように動くことを「眼振」といいますが、めまいが起こると、眼振のコントロールがうまくできなくなります。そこで眼振を検査することで、三半規管のある内耳の状態を調べます。
そして、良性発作性頭位めまい症と診断した場合は、「浮遊耳石置換法」という、患者さんの頭や身体を動かして、三半規管に入った耳石を移動する治療が行なわれます。良性発作性頭位めまい症の7~8割は、この治療でよくなります。
良性発作性頭位めまい症の注意点
良性発作性頭位めまい症は、病名に「良性」とあるように、ほとんどは数日から2週間程度で軽快します。しかし、発作性頭位めまい症には、「悪性」のものも存在するので軽視はできません。違いとしては、良性が耳から起こるのに対して、悪性の場合は小脳の出血や腫瘍や梗塞などによって起こります。悪性の場合は治療しないで放置すると、生命に危険がおよぶ恐れがあります。
良性か悪性か、専門医は適切な診断手順で判断します。朝起きたときや頭の位置を変えたときに、回転性のめまいが繰り返し起こるときは放置せず、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。