うっ血性心不全とは
「心不全」という言葉をよく目にされると思います。心不全というのは病名ではなく、心臓の機能がうまく働かず、血液循環が滞ってしまう状態のことを言います。心不全は、狭心症や心筋梗塞といった心臓の病気だけでなく、高血圧や腎臓病、ウイルス感染症といった病気によっても引き起こされます。また、過度のアルコール摂取や薬物依存が心不全の原因となることもあります。
うっ血性心不全は、心不全によって、臓器や血管に「うっ血(血液の流れが悪くなり、滞ってしまうこと)」が起こっている病態です。
よくある症状としては、息切れ(呼吸困難)、激しいせき、胸の痛み、手足のむくみ(浮腫)、倦怠感、夜間の頻尿といったことがあげられます。
うっ血性心不全の重症度
うっ血性心不全の重症度は、4段階に分類されています。うっ血性心不全になると、比較的症状の軽いⅡ度から、身体活動の制限が必要になります。Ⅰ度 身体活動に制限はない(日常的な身体活動では、著しい疲労、動機、呼吸困難、狭心痛を生じない)。
Ⅱ度 軽度ないし中等度の身体活動の制限がある(日常的な身体活動で疲労、動機、呼吸困難、狭心痛を生じる)。安静時には無症状。
Ⅲ度 高度な身体活動の制限がある(通常以下の身体活動で疲労、動機、呼吸困難、狭心痛を生じる)。安静時には無症状。
Ⅳ度 いかなる身体活動も制限される(安静時にも心不全症状や狭心痛があり、わずかな活動でも症状が悪化する)。
うっ血性心不全の検査と治療
うっ血性心不全の検査には、血液検査、胸部レントゲン検査、心電図、心エコー検査などがあります。そして、さらに詳細な検査が必要な場合には心臓カテーテル検査が行われます。心臓カテーテル検査は、カテーテル(医療用の細い管)を手首から挿入して心臓を調べる検査方法です。うっ血性心不全の治療では食事療法のほかに、血管を拡張して血圧を下げて心臓の負荷を軽くする薬や、心筋の伸縮率を増す薬、体内の水分量を減らすために利尿剤を使う薬物療法が行われます。
こうした治療で十分な効果が得られない時、条件が整えば人工心肺装置を使用して血液を体外循環させる治療法や、人工心臓を使用する方法、心臓移植といった治療法が検討されています。
慢性的な息切れや足のむくみを軽視しない
うっ血性心不全は、症状が急激に悪化する場合もありますが、慢性的な症状が次第に悪化することで重症化してしまうケースが多く見られます。慢性的な息切れや足のむくみといった症状を軽視しないようにしましょう。これらは、うっ血性心不全のみならず、心臓の病気では非常によく見られる初期症状となっています。
超高齢化社会を迎えた日本では、高齢者世代のうっ血性心不全患者が増えています。気になる症状がある方は、症状が悪化するまえに、かかりつけの医や専門医に相談することをお勧めします。