健康診断と肝炎ウイルスで――肝臓の状態を知ろう!

 肝臓は「沈黙の臓器」といわれ、病気になっても、かなり症状が進まないと自覚症状を感じにくい臓器です。 大切なことは、肝臓の状態を知ることです。それには、定期的な健康診断と、肝炎ウイルス検査が必要です

肝臓は化学処理工場

 肝臓は、人体に吸収された物質を分解・解毒し、それらを身体に必要な物質に変える働きを担っています。さらには、処理した物質を蓄え、必要に応じて身体に送り出す役割もあります。
 肝臓は肝細胞という1mmの500分の一ほどの小さい細胞が無数に集まってできています。これらの肝細胞の一つひとつが、2000種類以上ともいわれる酵素(物質を分解するための分子)を産生して500種類以上の化学処理を行っています。


肝臓――四つの病気

 肝臓の病気には大きく、「肝炎」「脂肪肝」「肝硬変」「肝臓がん」の四つがあります。
「肝炎」は、肝臓に炎症が起こっている状態のことです。脂肪肝から肝炎へと進行するケースや、肝炎ウイルスの感染によって起こるケースがあります。
 肝臓には脂肪を蓄える役割がありますが、生活習慣や食生活によっては、肝細胞の働きを阻害するほど大量の脂肪が肝臓に溜まることがあります。これが「脂肪肝」です。
 「肝硬変」は、多数の肝細胞が死滅することで起こります。肝細胞は死滅すると硬い繊維組織へと変化して元には戻りません。
 「肝臓がん」は、慢性的な肝炎、肝硬変が原因となって起こります。B型の肝炎ウイルスに感染している場合は、ウイルス自体ががんを発症させることもあると考えられています。


肝臓の状態を知るために――健康診断

 肝臓には痛みを発信する神経が臓器の表面にしかないため、内部の肝細胞が破壊されても自覚症状が起こりにくいといった特徴があります。
 ところで、健康診断を受けている方は、「ALT(GPT)」「AST(GOT)」といった項目を目にされていると思います。
 これらは、肝細胞が破壊されると血液のなかに溢れだしてくる物質の名前です。数値が高いほど肝細胞の破壊が進行していると考えられ、異常に対して自覚症状がでにくい肝臓では、とても重要な検査項目となっています。

肝臓の状態を知るために――肝炎ウイルス検査

 肝臓の病気の原因としては、アルコールの過剰摂取が思い浮かびますが、肝硬変の原因のほとんどは、肝炎ウイルスの感染によるものです。
 肝炎ウイルスの感染者は約300~370万人とされ、国内最大の感染症ともいわれていて、感染者の9割は40代以上の人です。
 肝炎ウイルスに感染しているかどうかを知るには、「肝炎ウイルス検査」を受ける必要があります。
 肝炎ウイルス検査は、採血によって行われる検査で、身体には負担の少ない検査といえるでしょう。
 さらにこの検査は、全国の保健所や指定医療機関で、無料で受けることができます(地方によっては、検査費用の一部を負担する場合もある)。
 肝炎ウイルスは、血液によって人から人への感染も起こるため、ご自身が知らないうちに感染源となってします可能性も否定できません。検査を受けたことがない方は、ぜひ肝炎ウイルス検査を受けるようにしてください。