日本人のふたりに一人が、がんを患うとされる現在――男女合わせて、もっとも多くの人が罹っているがんが、大腸がんです。新たに大腸がんと診断される人は年間で、13万5000人に上り、死亡者数も年間で6万人もの方が亡くなられています。その一方、大腸がん検診を定期的に受けることで、死亡リスクを大幅に低下させることが可能とされています。
大腸がんの初期は自覚症状に乏しい
大腸がんは大腸の粘膜にできるがんで、ポリープ(粘膜の一部がイボ状に盛り上がったもの)ががん化したものと、粘膜の炎症が直接がん化したものがあります。大腸がんは比較的病気の進行が遅いがんで、治る可能性の高いがんとされています。
しかし、それでも年間の死亡者数が多いのは、大腸がんの初期段階は、これといった自覚症状に乏しいため、医療機関への受診が遅れてしまっていることが関係しています。
大腸がんステージと生存率
大腸がんが進行すると、がんによって障害を受けた腸管からの出血が便に混ざっていたり、腸粘膜の腫れによって排便が阻害されることで腹部の異変、便通の異常といったことが起こります。そして、さらにがんの進行が進むと、激しい腹痛や吐き気、腸閉塞(便が腸を通れなくなる病気)といった重篤な症状が起こるだけでなく、腸管を突き破って腸の外に出たがん細胞による、ほかの臓器への転移が起こります。
大腸がんは、がんの進行度によってステージが0から5段階に分けられています。大腸がんの生存率は、ステージ0~Ⅱであれば90%を超え、ステージⅢでもリンパ節の転移が少なければ80%近くになります。その一方、ステージⅣまで進行すると、生存率が20%以下へと急激に低下します。
大腸がんの特徴
①原因を完全に取り除くことが難しく、誰でも大腸がんになる可能性がある。
②早期発見ができれば高い確率で根治が可能だが、大腸がんの初期は、自覚症状に乏しい。
大腸がんの特徴①②から、大腸がんを早期発見するには、定期的(年1回)な大腸がん検診が欠かせません。
大腸がん検診では、まず『便潜血検査(検便)』によって、便に血液が混ざっていないかどうかを調べます。
便潜血検査は、採便用の棒で便をこすり取って提出するだけの簡単な検査です。便潜血検査で大腸がんの疑いがある場合は、『精密検査(内視鏡検査や直腸診など)』が行われます。大腸の内視鏡検査に関しては痛みはほとんどなく、
また痛みが心配な人には鎮痛剤が投与されます。検査時間も20分程度となっています。また、近年では、管状の内視鏡検査が難しい場合、身体の外からCTスキャンを行なって画像でがんを調べる検査やカプセル型の内視鏡を飲み込みことで腸内の様子を撮影する検査も行なわれています。