人間ドックについて知ろう

「年に1回健康診断は受けているけれど、人間ドックは受けたことがないなぁ」そんな方が少なくないのではないでしょうか。健康診断を受けることは、とても大切なことですが、それだけでは兆候がつかめない病気もあります。人間ドックというと敷居が高く感じられるかもしれませんが、ある年齢になったらまずは一度受けられるとよいかもしれません。

人間ドックって何?

1年に1度皆さんが受けられている一般的な健康診断(以下:健診)は、スクリーニング、つまり身体の主な部分に異常があるかないかの「振るい分け」です。ただ、検査項目は限られていて、健診だけでは見つけられない異常もあります。一方、人間ドックでは健診よりさらに多くの臓器を対象に詳しい検査が行なわれます。オプションをつければ脳や婦人科系など、さらに特定の臓器を詳細に調べることができます。このため人間ドックは、健診よりも身体の異常や病気を見つける精度が高いのです。人間ドックには次のようなものがあります。

・基本人間ドック……半日~1日かけて検査を行なうもの。
・総合人間ドック……1泊2日でさらに詳細な検査を行なうもの。
※どちらもオプションをつけることが可能です。


人間ドックでは何が行なわれるの?

人間ドックで行なわれる主な項目を見ていきましょう。
【身体計測】
身長・体重・BMI(体格指数)を調べます。2008年からは腹囲の測定も行なわれるようになりました。男性は85cm以上。女性は90cm以上だと内臓脂肪過多と診断されます。
【血圧】
基準値はいわゆる上(収縮期血圧)が100~129mmHg、下(拡張期血圧)が50~84mmHgです。値が基準値を超えると高血圧と診断されます。
高血圧は心臓や脳、腎臓の疾患を引き起こすこともあり、経過観察・治療が必要になります。
【心電図】
心臓から発する電気信号をとらえて、記録された波形を診断します。狭心症や不整脈など様々な心臓の異常を見つけることができます。
【目の検査】
①視力検査…目が対象を正しい形でとらえられているかを調べます。基準値は裸眼で1.0、矯正視力で0.7とされています。
②眼圧検査…眼球内の圧力の高さを調べます。基準値は7~21mmHg。高い場合は緑内障、低い場合は網膜剥離が疑われます。
③眼底検査…眼球の内側、すなわち眼底を撮影して、血管や神経の異常の有無を調べます。この検査では、網膜剥離や緑内障、眼底出血、動脈硬化などを見つけることができます。
【聴力検査】
片耳ずつ、高い周波数の音と低い周波数の音を聞きとる検査です。基準範囲は30dB以下で、それ以上だと聴力の障害が疑われます。そのレベルによっては、補聴器の使用を勧められることもあります。
【呼吸器の検査】
①呼吸機能検査…スパイロメーターという機器を使用して、肺が空気をためられる容量や吐きだす力を調べます。呼吸器の異常の有無がわかります。
②胸部X線検査…胸部をX線撮影して、主に肺の異常を調べます。様々な肺の疾患の発見に有効ですが、とくに白い影が見られるときは、肺炎・肺結核が疑われます。がんの発見にも有効です。
【消化管の検査】
X線撮影や胃カメラを用いて、消化管の異常を調べる検査です。炎症や潰瘍、腫瘍などを見つけることができます。患者さんの希望や、人間ドックのプランにより、①か②のどちらかが行なわれます。
①上部消化管X線検査…胃を空にした状態で、造影剤であるバリウム液と発泡剤を飲み、食道・胃・十二指腸をX線撮影します。異常の疑われる部位を写真で調べます。
②上部消化管内視鏡…いわゆる胃カメラを口(または鼻の穴)から挿入し食道・胃・十二指腸の様子を調べます。
【腹部超音波】
腹部に超音波を発するプローブという機器を当て、肝臓・胆のう・膵臓・腎臓などを調べます。画面で画像化されて表示されるため、腫瘍など様々な異常を見つけることができます。
【血液検査】
項目は多岐に渡り、糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病を始め、様々な病気の兆候を見つけることができます。
【尿検査】
尿内の成分を調べることで、腎臓の異常の有無を調べます。
【便検査】
採取した便を調べることにより、大腸の異常の有無を調べます。
【内科診療】
医師による診察や問診が行なわれます。


その他の検査

受診する医療機関の設備によっても異なりますが、人間ドックにオプションをつけることもできます。例えば、脳ドック(MRIなどで脳を詳細に調べる)や婦人科ドック(超音波やマンモグラフィーを用いて乳がんを調べる/内診や超音波で、子宮頸がん、子宮筋腫などを調べる)といった様々なオプションがありますので、気になる部位はオプションで受けてみるとよいでしょう。

費用はどのくらいかかるのか

人間ドックは健康保険が効かないため、基本的に全額自己負担となります。費用の目安は、基本人間ドックが3万~6万円、総合人間ドックが10万円程度とされています。これに婦人科ドックなどのオプションを付ければ、価格が上乗せされることになります。全額自己負担とはいえ、社会保険や国民健康保険、個人で契約している生命保険から補助金を受けることもできます。それぞれ補助金の金額は加入している健康保険組合などによって異なりますので、問合せをしてみてください。
※検査項目は公益社団法人日本人間ドック学会のホームページを参照しました。