昼間の血圧測定から隠れる 仮面高血圧

血圧が高めではあるが、高血圧の診断基準よりは低い数値に収まっている———こうした方の健康を脅かすもの、それが仮面高血圧です。

仮面高血圧とは

 血圧は、心臓の収縮・拡張にともなう血管にかかる圧力を測定します。医療機関で血圧を測定した場合、心臓の収縮期(上の血圧)が140㎜Hg以上、心臓の拡張期(下の血圧)が90㎜Hg以上で高血圧と診断されます。
 ただ、血圧は常に一定ではありません。
 血圧は、自律神経の働きと密接に関係しているため一日を通して変動し、また、精神的な状態によっても変動します。
 一般的には、起床して身体活動が始まると血圧は上昇し、寝ている間は低下します。
 日中に血圧を測ったときは正常範囲に収まっているのに、特定の時間帯になると高血圧になる———昼間の血圧測定では見つけにくい———こうした高血圧は「仮面高血圧」と呼ばれています。
 仮面高血圧には、早朝に血圧が高くなる「早朝高血圧」や夜間(就寝中)に血圧の高い状態が続く「夜間高血圧」があります。


早朝高血圧———脳卒中や心筋梗塞の原因に

 早朝高血圧には、朝の血圧が急激に上昇する方や、寝ている間に血圧が下がらず高いままの方が該当します。
 注目していただきたいのは、早朝高血圧の診断基準です。
 収縮期血圧(上の血圧)が135㎜Hg以上、拡張期血圧(下の血圧)が85㎜Hgと、昼間の血圧測定の診断基準より数値が低い点です。診察室での血圧測定が高血圧の基準以下でも、手放しで安心することはできません。
 早朝は、脳卒中や心筋梗塞などが起こりやすい時間帯でもあります。早朝高血圧には、十分な注意が必要です。

夜間高血圧———昼間であれば正常値?

 夜間高血圧では、収縮期血圧(上の血圧)120㎜Hg以上、拡張期血圧(下の血圧)70㎜Hg以上と、さらに診断基準が低い数値になっています。これは、昼間の血圧であれば、正常値とされる数値を含んでいます。
 夜間高血圧には大きくわけて、昼間より夜間に血圧が高くなるタイプと、就寝中、血圧があまり下がらないタイプがあります。
 どちらの場合も、長時間(長期間)にわたって血管や臓器に負担がかかるため、重篤な病気を引き起こす原因になります。

仮面高血圧———早めの対処が大切

 仮面高血圧かどうかを知るには、医療機関で、医師に機器の使用が必要と判断された方に貸し出される「24時間自由行動下血圧測定(ABPM)」か、夜間の血圧を自動的に測定できる家庭血圧計を利用します。
 仮面高血圧と診断されたら軽視せず、医師の指導に従って、高血圧対策を行ってください。
 状態によっては、降圧剤を使用した薬物療法が行われます。
 また、塩分の摂り過ぎに注意する。アルコールを適量に控え、喫煙習慣のある方は禁煙する。運動習慣を取り入れるといった生活習慣の改善が重要になります。
 仮面高血圧には、睡眠時無呼吸症候群が関係していることがあります。このケースでは、睡眠障害の改善が必要です。