甲状腺疾患とアレルギーの関係

甲状腺疾患(とくにバセドウ病と橋本病)においては、アレルギー疾患との関係が指摘されています。これらの病気は免疫に関係する病気であるうえに、アレルギー疾患を放置することが、バセドウ病や橋本病の悪化につながることがわかってきたためです。

甲状腺の働きとは

 甲状腺は、のど仏の下にある蝶のような形をした臓器です。
 甲状腺では、食物に含まれるヨウ素(ヨード)を材料として甲状腺ホルモンが生成されます。
 そして甲状腺は、甲状腺ホルモンが血液中で一定の値になるようにする脳からの指令(甲状腺刺激ホルモン(TSH))によって、甲状腺ホルモンを分泌します。
 甲状腺ホルモンには、身体の新陳代謝(古い細胞が新しい細胞に入れ替わる仕組み)を促進する働きがあります。
 この働きにより、骨や皮膚、脳など、全身の組織が維持され、また、生命活動に必要なエネルギーが生み出されています。



バセドウ病と橋本病の特徴

 甲状腺に異常が起こり、甲状腺ホルモンの分泌過剰や不足が起こる病気は、「甲状腺疾患」と呼ばれています。
 甲状腺疾患では、バセドウ病と橋本病の患者数が多くなっています。それぞれの病気の特徴を見ていきましょう。

【バセドウ病】
 バセドウ病は、甲状腺に対する自己抗体によって、甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる病気です。
 その結果、全身の臓器に大きな負担がかかり、次のような症状が出ます。
○心臓が働きすぎることによる、動悸(心臓の鼓動が速い、強い、あるいは不規則)。
○新陳代謝が高まることによる、多汗、暑がり、疲労感、体重減少など。
○腸の働きが活発になって、消化・吸収前に、下痢として排便される。
○目の筋肉に影響を与え、眼球突出の原因となる。
○月経異常。

【橋本病】
 橋本病は、甲状腺を攻撃する自己抗体が組織を破壊することで機能低下を起こし、甲状腺ホルモンの分泌が減少していく病気です。
 橋本病では、次のような症状が見られます。
○心臓の働きが低下することによる、徐脈(心臓の鼓動が遅い、弱い、あるいは不規則)。
○新陳代謝が低下することによる、寒がり、疲労感、体重増加、皮膚の乾燥。
○腸の働きが衰えることによる、便秘。
○月経異常。



アレルギーが甲状腺に与える影響

 バセドウ病と橋本病とアレルギーは、ともに免疫に関係している点が共通しています。そしてこれらの病気の間には、次のような関連性が指摘されています。

【バセドウ病】
 バセドウ病患者の約3分の1〜半数の人は、アレルギー症状を合併していると言われています。
 アレルギーを放置・悪化すると、免疫機能を働かせるための「Th2細胞」が過剰に活性化します。
 この影響を受けて甲状腺も活発になり、甲状腺ホルモンの分泌が増加し、バセドウ病の症状が悪化すると考えられています。

【橋本病】
 橋本病患者の多くが、アレルギー症状を併発していると言われています。
 橋本病では、基本的に「Th1細胞」が優位になります。
 Th1細胞には、アレルゲンを排除するための免疫機能の司令塔の役割があります。
 その一方でこの細胞には、甲状腺を直接攻撃して炎症を引き起こし、組織を破壊するという性質もあります。
 このためTh1細胞が増えすぎると、橋本病の悪化につながる恐れがあります。


アレルギーを放置するリスク

 日本では約3人にひとりが、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、ハウスダストアレルギー、食物アレルギー、金属アレルギーなど、なんらかのアレルギー疾患を持っていると言われています。
 アレルギー症状を放置すると免疫反応が過剰になり、バセドウ病、橋本病の悪化や再発、病気が治りにくくなるといったリスクになります。
 甲状腺疾患と同時に、アレルギー疾患の治療を継続的に行なうことが大切です。