知っているようで知らない~そもそも「がん」って何?~

 B太君は学校のレポートで「消化器のがん」について調べることにしました。でも、調べていると、「がん」そのもののことがわからないことに気づきました。「叔父さんに話を聞いてみたら?」お姉さんのA子さんのアドバイスで、医師である叔父さんのところを訪ねることにしました。「がん」って一体なんなのでしょうか?



2人に1人はがんになる時代

 叔父:(以下、叔)やあ、B太君。A子ちゃんから中学校のレポートのことは聞いているよ。
 B太:(以下、B)叔父さんこんにちは。うん、消化器系のがんのことを書こうと思ったんだけど、そもそもなんでがんって出来るんだろうと思って、そっちを調べてみたくなったんだ。
 叔:よいところに目をつけたね。意外と「がん」自体のことはあやふやなイメージだけ持っている人も多いんだ。今は生涯のなかで2人に1人ががんになる時代だ。決して他人事じゃない。がんそのものの正体を知っておくことはとても意味のあることだと思うよ。
 B:がんって2人に1人はかかる病気なの!? 知らなかった。よろしくお願いします!

肝臓は肝細胞という1mmの500分の一ほどの小さい細胞が無数に集まってできています。これらの肝細胞の一つひとつが、2000種類以上ともいわれる酵素(物質を分解するための分子)を産生して500種類以上の化学処理を行っています。

がんは何からできているのか?

 叔:ちょっと難しい話も混じるけれど、頑張って聞いてくれ。私たち人間の身体はひとつの受精卵が分裂して出来たものだ。もちろん君もね。細胞というものは生まれてから死ぬまで、身体のなかで常に作り続けられているんだ。役目を終えた細胞を新しい細胞に入れ替えるために。これを新陳代謝という。
 B:身体には約60兆個の細胞があるって聞いたことがあるけど、全部が入れ替わるの?
 叔:そうじゃないよ。部位によっては一生入れ替わらない細胞もあると言われているけれど、皮膚のように入れ替わりが激しく短期間で行なわれる部位もある。だから毎日膨大な数―3000億個ほどと考えられているが―の細胞が生まれているんだよ。
 B:ふうん。それががんとどう関係するの?
 叔:まあ聞いてくれ。1つの細胞のなかには、その人の身体の全てを作るプログラムが入ったDNAというものがある。毎日生み出される膨大な数の細胞のなかには、不良品(=エラー細胞)も混じっている。エラー細胞は、DNAに傷がついていて、身体のなかで正しく機能しないんだ。
 B:エラー細胞は身体のなかに残ってしまうの?
 叔:いや、身体を守る免疫細胞が、異物として駆除するよ。でも、すべてのエラー細胞を取り除ききることは難しい。
 B:えっ、取り除けなかったエラー細胞はどうなるの?
 叔:これこそが「がん細胞」とよばれるものだ。そしてこの細胞が増殖してしまうと、がんという腫瘍ができる病気となる。(※一部、ウイルス感染によって細胞ががん化して生じるがんもある。)
 B:がんが自分の身体の細胞でできているなんて知らなかったよ。
叔:普通の細胞は、身体の部位に必要なだけしか増えない。しかしエラー細胞は増殖にストップがかからないんだ。もちろん、身体中をパトロールしている免疫細胞が、腫瘍化を抑えることもある。でも、がん細胞の勢いが強いとがんが発症してしまうんだよ。

がんという病気とは?

 B:うーん、がん細胞が増えて腫瘍になることはわかったけれど、それが身体にどんな害をおよぼすのかな?
 叔:臓器はみんな働きをもっている。そのなかで腫瘍がどんどん大きくなってしまったら、臓器が充分に働けなくなって機能が低下してしまう。それから、がんは自分のために新しい血管を作ったりする。がんに血液がいってしまったら、臓器に必要な栄養が行き渡らなくなってしまう。それから、がんは上皮細胞にできることが多い。消化器官だったら、一番内側の食物に接する粘膜の部分だね。がんが悪性だった場合、上皮細胞の下の層、下の層へと増殖していく。これを「浸潤(しんじゅん)」といって、どこの層まで進行しているかをステージいくつと表現する。ステージが進むと、他の臓器まで達したり、がん細胞が血液に運ばれて別の臓器でもがんを発症したりする(転移)。手術で切除する部分が増えたり、治療の難度があがってしまうんだ。

良性腫瘍と悪性腫瘍とは?

 B:腫瘍の良性と悪性というのは何なの?
 叔:良性腫瘍は、粘膜の上にポコッと盛り上がっていて、その下の層に影響をおよぼさないものだよ。ポリープと呼んだりもするね。どんどん大きくなったりしない。でも後々、悪性化する可能性もあるから、大きさの経過を見たり、切除したりするよ。悪性腫瘍はどんどん大きくなる(平たくても広がる)ことが特徴で、下の層へ浸潤したり、転移するもの。こちらを「がん」というんだ。



がんの予防とがんの薬

 B:がんを予防するにはどうしたらいいのかな
 叔:自分の身体は自分でしか守れない、免疫機能が働けるよう、そして血液という栄養がすみずみまで届けられるよう、運動で血行をよくすること、栄養をきちんととること、休養を充分とること。それから喫煙など発がん性のあるものは遠ざけること、つまり、みんなが思う健康的な生活を実践することだね。あとは、健康診断や人間ドッグを年に1回は受けること。がんができても早期発見の可能性が高まる。
 B:がんの薬ができたのはすごいことなの?
 叔:オプシーボだね。がんの末期の患者さんに効果があって「夢の薬」とよばれる画期的な薬だよ。でも、副作用が強まるなどの症例もあるから、これからの発展が、がんという病気と人との関係をきっと変えていくと思うよ。