すい臓がん

がんを患っても初期の症状が少ない、沈黙の臓器のひとつ、すい臓。アルコールを大量に飲む習慣のある方、糖尿病の患者さんは用心したい臓器です。今回はすい臓がんについてのお話です。

身体の深部にある臓器

 正面から身体を見たとき、胃の裏側に位置しているのがすい臓です。
 すい臓は、身体の深部にあり、大きさは15センチメートルほどです。十二指腸側から、すい頭、すい体、すい尾の3つの部分から成っています。
 すい臓の働きは大きく2つに分かれ、ひとつは外分泌部。これは、腸にすい液を流す役割があります。すい液には消化酵素(タンパク質分解酵素、脂肪分解酵素、炭水化物分解酵素)が含まれています。これらは食物が小腸で消化されるのを助けるほか、アルカリ性であるため、胃酸を中和し、腸の保護にも働きます。
 もうひとつは内分泌系で、すい臓のなかに散在するランゲルハンス島です。ここからは、血糖値を上昇させるグルカゴンや反対に血糖値を下げるインスリンというホルモンなどが放出されています。このように、すい臓は身体の奥深くで栄養に関わる役割を果たしています。

すい臓と病気、がん

 前述のように、すい臓は、いくつかの臓器に囲まれた身体の深い部分に位置するため、普通のエックス線にうつりません。また、沈黙の臓器のひとつと呼ばれるように、疾患があっても自覚症状がでにくいことがわかっています。つまり、早期発見が難しいのです。
 すい臓の病気としては、急性すい炎、慢性すい炎、すい臓がんが挙げられます。
 すい臓がんの場合、そのほとんどが、すい臓を貫いている「すい管」にできるすい管がんです。
 自覚症状がわかりにくいのですが、何を目安にしたらいいかというと、大量の飲酒習慣がある、喫煙習慣がある、遺伝、過剰なストレス、食欲の減退や体重が減少してきた、急な糖尿病の発症、腹部が張る感じがある、黄疸などがある場合です。また、糖尿病の患者さんは、すい臓がんを発症しやすいとされていますので、注意が必要です。
 これらに心当たりのある人は、人間ドックなどで検査項目を増やすなどして早期発見を逃さないことがとても大切です。




すい臓の検査

 すい炎やすい臓がんが疑われる場合は、血液検査をはじめ、腹部超音波検査を行ないます、さらに、腹部CT検査を行なう場合もあります。
 血液検査では、すい臓の異常をみる「血清すいアミラーゼ」、すい臓が正しく機能しているかを調べる「リパーゼ」があります。また、すい腫瘍マーカーや、上腹部超音波検査やCT、MRIなども行ないます。

すい臓がんの治療

 すい臓がんは症状がでにくいため、予防はもちろん、早期発見がとても重要になります。
 既に糖尿病の方は、年に一度超音波検査などを受けるとよいでしょう。また全般的には、禁煙すること、脂質の少ない食生活、過度のアルコール摂取を控えるなども大切になります。

予防するには

 一般に、すい臓がんの治療として行なわれるのは、
・手術療法
・抗がん剤による化学療法
・放射線療法 です。
 すい臓は、身体の奥深くにあるため、他の臓器を一緒に取りだして手術をしなくてはならず、手術をするのに難しい臓器とされてきました。
 すい臓がんは、進行してから発見されることが多いため、実際に手術が出来るケースは、患者さんの3割ほどになります。手術療法の場合は、限定的ながんに関しては、部分切除、大きいがんに関してはすい臓の全摘となります。
 手術できない7割のがんに関しては、抗がん剤と放射線療法を併せるなどの治療が行なわれます。